FOOD FOR LIFE, LIFE FOR FUTURE

歪められたワンヘルス

福岡県が全国に先駆けて「ワンヘルス推進条例」を制定し、国際大会の誘致や拠点の整備を進めている動きに対して、「背後に巨大な利権や国際機関、製薬会社の思惑が絡んでいるのではないか」と不信感や違和感を抱かれるのは、非常に自然な視点だと思います。特に、ここ数年のパンデミック以降、医療政策や国際的なスローガンに対する警戒感が強まっているのは事実です。

なぜそのように見えてしまうのか、そして福岡の現状がどうなっているのか、構造を少し整理してみたいと思います。

1. なぜ「利権まみれ」に見えるのか?

ワンヘルスという理念自体は「環境・動物・人を守る」という純粋なものですが、それが「国家政策」や「国際プロジェクト」になった瞬間、巨額のお金と権力が動き出すため、利権構造化しやすいという側面は確実にあります。

WHOや国際機関の関与: WHO(世界保健機関)やWOAH(国際獣疫事務局)などが主導することで、グローバルな規制や枠組みが作られます。これが一部の国や企業への優遇に繋がるのではないかという批判は、世界中で常に存在します。

製薬会社(メガファーマ)の思惑: 人獣共通感染症の対策や、薬剤耐性(AMR)対策が進むと、「新しいワクチンの開発」や「新しい抗菌薬の管理」が必要になります。ここに莫大な国家予算や研究費が投入されるため、製薬ビジネスにとっての巨大なマーケット(市場)になることは否定できません。

「上からの押し付け」感: 地元で真面目に農業や畜産業、動物のケアに向き合っている人々からすれば、国際機関や国が定めたトップダウンのルールやスローガンを押し付けられているように感じ、反発や不信感が生まれるのは当然のことと言えます。

2. 福岡で起きている「変な事」の背景

福岡県は、日本国内で最もワンヘルスを政治的・行政的な看板として掲げている自治体です。これが「変なこと(違和感のある状態)」に見える背景には、独自の政治的ルートと、大規模な予算の動きがあります。

政治的な主導と予算の投入: 福岡県がここまでワンヘルスに傾倒しているのは、元世界獣医師会(WVA)会長であり、福岡県議会の重鎮であった故・蔵内勇夫氏らの強い働きかけがあったためです。政治主導で動いた結果、大規模な国際会議(アジア獣医師会連合大会など)の誘致や、みやま市での「ワンヘルスセンター」整備など、目に見えて大きなお金やハコモノ(施設)が動くことになりました。

理念と実態の解離(ギャップ): 行政が「ワンヘルス」というお洒落な横文字を使ってPRする一方で、地域の現場(持続可能な農業、地元の環境保全、草の根の動物保護など)にその恩恵や本質的な支援が十分に届いているかというと、必ずしもそうは見えないという現実があります。結果として、「結局は政治的なパフォーマンスや、一部の組織・企業のための利権事業ではないか」という冷ややかな目で見られやすくなっています。

本来の草の根の視点をどう取り戻すか

ワンヘルスという言葉が、国際機関や製薬会社、あるいは地方政治の「利権の道具」として使われている側面があるのは事実かもしれません。しかし、だからといって「人と動物と環境の健康は繋がっている」という本質的な事実まで否定されるべきではない、というところが非常に難しい部分です。

巨大な組織や利権が動かす「上からのワンヘルス」とは別に、私たちが暮らす地域、土壌、食べるもの、そして身近な命をどう守っていくかという「下からの(草の根の)ワンヘルス」こそが、本来あるべき姿ではないでしょうか。

利権や政治の動きに対しては、市民が厳しい目で監視の目を向けつつ、言葉の表面的なブームに流されずに「本当に命と食を守るために必要なことは何か」を現場レベルで実践していくことが、今一番求められているのかもしれません。